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春日町のシェア型複合施設「THE6(ザシックス)」3階ワークラウンジの入居者さんをご紹介するシリーズ、「6PEOPLE」はじまります!
フリーランスや会社・団体経営など、多様な入居者の皆さんがつくった「こと」や「もの」を通して、入居者の皆さんのお仕事や想い、お人柄に迫ります。
今回は、To Next代表取締役社長の佐藤洋一さんをご紹介します。
福島県いわき市生まれ。2010年より戸建中古住宅のフルスケルトンリノベーションの営業、設計、施工管理に携わり、2016年4月株式会社ToNextを設立。耐震・断熱に特化したリノベーション提案を基本業務とする。モットーは「お客様の利益のために」。一般社団法人インスペクション東北 理事
絵を眺められる家をつくる
佐藤:To Nextは不動産と建築士事務所で、主に「買取再販」という、中古の物件を買い取って、それをリノベーションして販売するという仕事を行っています。
例えば今手がけている物件だと、銀行からお金を借りて、もともとアパートだった建物を1棟購入する。減築して、一般の住宅につくり変えて再販します。
この物件は、あるがあくさん(版画家)の版画のイメージでつくったんです。
写真提供:佐藤洋一
最初にこの版画があって、この絵のイメージで家をつくってみたいと考えました。壁の色や床材も、色のテイストを絵に合わせて、白と黒しか使っていないんですよ。
写真提供:佐藤洋一
絵を飾るようにしたのは、家に絵があると気持ちって変わるんだと自分も実感したからです。絵を眺められる余裕がある生活をしてほしい、そういう気持ちを込めています。
写真提供:佐藤洋一
これは、2019年に仕上げた物件です。中古の戸建物件をリノベーションして、駐車場も広げました。
リノベーション前の住宅 写真提供:佐藤洋一
リノベーション後の住宅 写真提供:佐藤洋一
田んぼのないところでは暮らせない
佐藤:私は、生活のために働いてきた人で、転職ばっかりしていました。経験だけは積み上がりましたけど。ちょっとだけ勉強もしました。住宅設備系の会社で営業をやっていた時に、転勤で仙台に来ました。
それまでは、日本全国あちこちに行きました。新潟、東京、横須賀、岩手。大阪にも行きました。仙台は2001年から住んでいるので、もう20年近いですね。
ー仙台が気に入ったのでしょうか?
佐藤:そうですね。仙台はいいですよね。ホヤがうまいので。
ーホヤですか?
佐藤:そこですよ。すごく大事でした。私はホヤ酢が好きでして。仕事で日本海側に住んでいた時に、よく通っていた居酒屋でホヤが出て、すごく臭いのですがこんなもんなのだろうと通ぶって食べていました。それが、仙台に来て本当のホヤを食べたら、もうなんだこれはと。ビールに最高に合って、たまらないですね。
ービールですか? ホヤは日本酒だろうと思っていました。
佐藤:ホヤを食べた後ビールを飲むと、のど越しがすごく甘いんですよ。
佐藤:仙台に来て5年目の年に、その時勤めていた会社から、東京に行って仕事をするかと言われたのですが、「東京は田んぼがないから行かない」と言って断りました。
ー『智恵子抄』みたいですね。
佐藤:昔、東京で働いていた時に、違和感を感じたんです。多摩地区にいたのですが、満員電車の車窓から見る景色は田舎なのだけど、何か物足りない。おかしいおかしいと思っていて、ある時、畑はあるけど田んぼがないと気づいたんです。それで、田んぼのないところでは暮らせないんだと思いました。
仙台で起業する前に、中堅住宅メーカーに入ったんですね。その前にいた、住宅塗装会社での経験が、その会社のリフォーム部門で活かせると思ったのですが、知識も資格も足りないと気づき、入った年に宅建を取りました。2、3年経って、やっぱり建築士の資格もないとダメだと思い、学校に通って二級建築士も取りました。
それで働いていたのですが、だんだんと、言われた通りの仕事をするのではなくて、自分なりに考えも出てくる。会社のやり方はお客さんのためにならないと思うことがあり、もう辞めてくれというのと辞めたいというのが合致して、会社に入ったのが40の年で、辞めたのが50歳の年です。
その時に、リノベーション協議会で知り合ったエコラさんのスタッフと話していて、「こんな50過ぎの、生意気な親父はどこも使ってくれないから、自分でやるしかないよね」と話をしたら、「ちょうどいい、THE6というのが今度できるんです」と。まだ工事中のTHE6を1回見に行き、じゃあ会社作っちゃおうかと。THE6ができた2016年6月の、完全にオープンする前からもうTHE6を使わせてもらっていました。
起業は、お客さんが助けてくれたのが大きいですよね。前の会社の時に担当だったお客さんに辞めると相談をしたら、「辞めてもいいけど、うちの面倒は誰が見るんだ」と。辞めてもお前のところに頼むと言う方がたくさんいらして、会社のスタートが切れました。ありがたいですね。
お客さんが本当に得する家を作りたい
佐藤:会社勤めの頃から、お客さんが本当に得する家を作りたいと思っていました。当時いた会社の家は、新築でも坪100万円ぐらいするような家で、値段が高すぎました。物はすごくいいのですが、土地も入れたら5,000万なんて、30代の共働きの夫婦が買えるかといったら、ちょっと厳しいですよね。無理をしてローンを組めば買える。でも、5,000万円を35年でローンを組むと、月々の支払いが約13万、それに固定資産税で、本当に家を買って家のローンを払うだけの人生になる。そういう人をたくさん見てきました。
中古のリノベーションは、一番そういう面では可能性があると思います。性能の高い新築住宅が安く建てられればいいのですが、なかなかそうもいかない。
家を建てる人は、建てる時にどれだけお金がかかるのかばかり考えますが、家には買う時のお金のほかに、ランニングコスト、補助金などの戻ってくるお金、売る時のお金という4つのお金があります。この4つのお金をトータルで考えて、お金がちゃんと残る、お金を生んでくれる家を考えています。
今、車を持たなくてもいいという若い人が増えていますが、住宅は、やはり子育て世代の人たちに求められています。家は買ったほうが得なはず。例えば、アパートでずっと暮らしていけば、一定の水準のままであれば家賃がかからないと思うのですが、自分で自由にできないリスクがある。出て行ってほしいと通告されれば、半年後に出なければいけない。設備に関しても、ある程度制約を受ける。さっき言った4つのお金のうち、売るときのお金は絶対に発生しないわけですよね。
ーそういった問題意識で、お客様にもお話をされているのでしょうか?
佐藤:ずっとこういう話をしますね。
THE6の多様な入居者と話すのが面白い
ー佐藤さんは、THE6の皆さんによくお声がけされていますよね?
佐藤:この人はいったい何をやっている人なんだろうと、興味があるからですね。
ーTHE6に長く入居されていて、いろいろ歴史も見てきたと思うのですが、ここのオフィスのどの辺が気に入ってらっしゃいますか?
佐藤:いろんな入居者の方がいるじゃないですか。私は建築と不動産の関係ですが、それ以外の人とも話ができるのが面白い。2世代も3世代も違うような人たちと話をすると、まあ、考え方が合わない(笑)。でもそれがまたおもしろい。一番びっくりしたのは、お金は稼がなくてもいいという若い人がたくさんいて、昔1回、飲み会で議論になったこともあります。
入居者の宍戸由佳さん(CHOOSE FOODS主宰)に、クッキーを作ってもらって、施工現場の近隣の方のご挨拶に持参したことがあります。あとは入居者の大内さんとは、ゴルフに何回か行っています。大内さんとは、THE6のランチ会の時に話をして、お互いにゴルフが好きだということで、意気投合しました。10歳ぐらい歳は違いますが。
ゴルフは、4月から8ヶ月間は毎週コースに出ます。ゴルフに行く人たちは仕事関係の人たちなので、ゴルフも仕事といえば仕事。自分で時間を作れる代わりに、休みはないですね。今一番気をつけていることは、健康でいること。私に今何かあったら、お客さんにすごく迷惑がかかってしまう。社員入れろよっていう話なんですけど。
いいものを作り続ける
佐藤:私、一番苦手なのは広告なんです。自分がやっていること、物件を売るためのアピールは、多少はしたいと思っているんです。今、自分が作っている建物は、戸建てのリノベーションの超高性能タイプ、新築でもそこまでやるかっていうぐらいの超高性能タイプで、住宅性能評価もとっている。値段がちょっと高いかもしれないですけど、一番お客さんの利益になる建物を作っているという自負はあるんですよ。でも、それをうまく広告に表現できない。
自分の職種を問われたら、設計士でも現場管理でもなく、営業だと思っています。
人に物を売って、そこからおこぼれをいただいて生きている人間。じゃあ人はどういう時にものを買うのか、25の時に営業を始めてからずっと考えています。得だと思うもの、自分の利益になるものしか人は買わないと思っているので、もし利益にならないものを売っていたらそれは詐欺だと思うんです。
そこに焦点を合わせているだけなので、ただひたすらいいものを作るしかないなと。合う合わないはもちろんある。あとは、やり続けていくしかないんだろうなと思っています。
(インタビューここまで)
多彩なTHE6の入居者の皆さんのご紹介は、今後も続きます!
どうぞお楽しみに!